俳優・丸井太郎のこと

lovelytsubasa2004-12-20


60年代版“成り上がり”?とも思える柴田錬三郎原作の立身出世ドラマ『図々しい奴』が日本映画専門チャンネルで来年1月から甦る。再放送も少なかったというこの作品、DVD録画で永久保存できるなんて、つばさ泣いちゃうモン!…ストーリーがものすごく快感なのだが、主人公を演じる角界出身の俳優・丸井太郎の存在も当時はかなりの注目を浴びた。ルックスは今で言うと、デブの内山君…といったところだろうか。丸井は貧しい境遇から這い上がる主人公を地でいくキャラクターで、当時の日本人の胸を熱くさせたという。

この作品のみで一躍、大映の大部屋俳優だった丸井は人気スターとなる。しかし、彼は映画会社主導の時代性を色濃く残している因習により、姿を消すことになる。
「売れている役者は映画優先」という姿勢を崩さない大映のために、映画界に戻った丸井。しかし彼の良さを引き出す作品とは出会えず、“テレビドラマに出ていない”という事実だけで、人々の心からいつしか忘れさられてしまった。完全にチャンスの波に乗り遅れてしまったのだ。無名な俳優を一躍スターにするのも、一晩でひきずり落とすのもテレビ。現在よりも、ずっとテレビが絶対的な娯楽だったという時代のお話。

そんな『図々しい奴』でのブレイクより4年後の1967年9月6日。丸井太郎、ガス自殺。『図々しい奴』になれきれなかった男の、あまりにも淋しい人生の幕切れだった。ちょうど街の商店街から映画館が次々となくなっていった頃。大映はその4年後に倒産し、映画界にとっての“冬の時代”が到来する。

ジャパニーズドリームだった『図々しい奴』