力道山

lovelytsubasa2006-03-12


先日、映画『力道山』をテアトル銀座で観る。平日の夜というのにかかわらず、ほぼ満席。ひと目でわかるプロレスファンや年配者が多い。女子は少なめ。

ようやく“力道山の陰の部分”が公に語られ出した。しかし「差別に負けず」的な美談でまとめられていたことや史実どおりには描かれていない点、その点は少し残念だった。これから力道山を知ろうとする若い人たちには充分楽しめる内容だろうとは思うが…。力士からの転職でプロレスラーとなった東浪役(実話では東富士)で出演していた故・橋本真也の姿には感慨深いものがあった。

力道山刺殺に関して多くの著作物で語られる、いわゆる“山口組田岡一雄、東声会、住吉連合会等でのゴタゴタ”。この作品では力道山を刺した男(山本太郎)が単に酔っ払いのチンピラでしかなく、組織がらみのものはまったく描かれていなかった。同時代の美空ひばりにしても、興行とヤクザという暗部を避けては語ることは出来ないのだが、ここまで踏み込むのはやはりタブーだったのだろう。割とそのあたりの描写を期待していたので、自分にとっては少々肩すかし…といった感じだ。

そんなことを考えつつも、思わず涙してしまったのが、力道山役のソル・ギョングの鬼気迫るプロレスシーン。国籍の違いを抱えながら「自分が最強」ということを疑わず、負けることを絶対に許さなかった彼の執念。そんな執念を画面いっぱいに狂気の世界として描いたカメラワークの素晴らしさに心底感動した。そして同じマイノリティである弟子・大木金太郎(原爆頭突きでおなじみ!)との心の交流も感動的なシーンだった。豊登、ハロルド坂田、シャープ兄弟など有名レスラーが続々と出てくるのにも感無量…。

いつか『三丁目の夕日』を観にいこうと思っていたのだが、『力道山』を観てからはなんだかどうでもよくなってしまった。単純にノスタルジーだけで昭和30年代を表現したものは、テーマパークだけで充分だ。

力道山 [Blu-ray]

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