“夢を与える職人“の憂鬱

脚本家、小説家として様々な話題作を残し、今月28日に亡くなった作家の野沢尚氏。創作上の行き詰まりや本人自身の神経の細さ(ネット掲示板での自分の作品への批評を特に気にしていたらしい)等、死の真相については様々な憶測が飛び交うばかりの状況だ。…それにしても野沢氏のようなエンタメ系作家の死というのはたまらなく辛いものを感じる。物事の俯瞰や客観視の徹底、己を信じる強靭な精神力、「とにかく読ませる」職人としての文章技術の向上など、一般的な娯楽や夢とは対極のところにあるものの中に自分を置きながら、多くの人々に夢を売り続ける。作品を作り出すごとに己の身をざっくりと削りながら、人々に夢や楽しさを売り続けるという宿命に苦しさを覚えるか、快楽を覚えるか。それがエンタメ系作家としての分かれ目というものなのだろうか。…ご冥福を深くお祈り致します。