アニ系・セブンティーズ

lovelytsubasa2004-06-15


 先日購入した秋吉久美子関連作品DVDと同時に、森下愛子関連作品群を購入しようかどうか迷う。どちらも70年代の「萌え系妹」キャラ。場末の映画館のスクリーンで初めて観たアイドル時代の森下愛子の姿はとても新鮮なものだった。ここ最近の『IWGP』や『木更津キャッツアイ』での彼女とは違った、若さ故の残酷さを秘めた視線が素晴らしい。若い世代にもぜひお薦めしたい作品群だ。
 日活はここのところ日活インスパイアフィルムズといった60年代、70年代邦画の掘り起こし企画に熱心だ。画像がとにかく鮮明で美しい。デジタル処理により、当時の空気がそのまま再現されたような、不思議な感覚だ。まさに「映画職人の仕事」を再確認できる。

 そして秋吉久美子主演『妹』*13度目の鑑賞。この作品は「萌え系妹」ムービーの最高傑作と言われているのだが、同時に“兄が妹を見守りながらも、様々な葛藤に苦しむ”「アニ系」ムービーでもある。藤田敏八監督は特に「萌え系妹」ムービーに強いひとでもあるが、「年上の男」の描き方も独特なタッチが特徴的な監督だ。『妹』での林隆三*2、扮する「女にだらしない、無口、無気力」な兄は以降の『バージンブルース』『もっとしなやかに、もっとしたたかに』『スローなブギにしてくれ』での、年下のヒロインと絡む「ダメ男」の系譜へと繋がっていく。妹を愛してしまう自分への苛立ちとダメぶりが、どうしようもない70年代独特の閉塞感を体現していて、観ている側の胸を締め付けるのだ。

 『もっとしなやかに、もっとしたたかに』のラスト近く、主人公の奥田英二と主人公と関わり合いを持つ少女・森下愛子との濃厚な絡みが描かれるのだが、監督は奥田氏に「妹との行為を思わせるように演技して欲しい」と指導したという。“妹を愛してしまうどうしようもないアニの気持ち”が藤田監督の根底に流れているのかもしれない。まさにアニの視線なのだ。

*1:主人公の兄妹の周辺に散らばる人物描写が面白く、悲しい。ねり(秋吉久美子)の義理の兄(伊丹十三)のむなしさがこめられた軽さが辛い。鎌倉の海岸に捨てられた三輪車のショット、そしてラストの屋台の俯瞰シーンを観るたびに、また観たくなってしまう不思議な作品だ。

*2:この作品でのひし美ゆり子とのラブシーンはとてもケモノっぽくてイヤだ(笑)